DOYENの新作CD、ゲイリー・カーティン (ユーフォニアム)の「エイラ・タイム(アイルランドの時)」が届きましたので、簡単にレビューしてみようと思います。
現在フォーデンズ・バンドの首席ユーフォニアム奏者であるゲイリー・カーティンのソロ・デビュー・アルバム。伴奏はフォーデンズ・バンドです。
「エイラ・タイム(アイルランドの時)」と名付けられたアルバムですが、民謡集ではなく、本アルバムのための委嘱作品など様々な作品が選ばれています。カーティン氏はアイルランド生まれなので、そことかけているような感じでしょうか。
カーティン氏は12歳の時にメイフィールド・バンドでバリトン奏者として活動を始めましたが、同バンドのユーフォニアム奏者が結婚してバンドを離れることになり、ユーフォニアムに転向したそうです。なかなか面白いきっかけです。
大学院生時代に、ユーフォニアムの教師を探すためにイギリスに行き、デヴィッド・ソーントン氏やロバート・チャイルズ氏といった名奏者に指導を受け、その間にブラック・ダイク・バンドとコーリー・バンドを聴き、イギリスへの移住を決めました。2005年にマンチェスターに移住し、王立北部音楽大学でスティーヴン・ミード氏に師事しています。
ウィンゲイツ・バンド、フェアリー・バンドと渡り歩き、2010年にはブラック・ダイク・バンドに入団します。2017年にフォーデンズ・バンドから打診され、ブラック・ダイク・バンドを離れてフォーデンズ・バンドの首席奏者となっています。これまでに主要なブラスバンドの大会でもベスト・ソロイストなどの賞を多く受賞しており、実力は折り紙付きです。
さてそんなカーティン氏のCD、特筆すべきはやはりその音楽へのアプローチでしょう。音色としては柔らかく暖かく、ユーフォニアムの特徴的なサウンドを活かした演奏が多いのですが、作品の奥深くにダイブして本質を描き出そうとするような演奏にグイグイと惹き込まれていきます。
協奏曲の見せ場のひとつでもある高速パートも、朗々と歌い上げるようなパートも、雷鳴のような激しい音を使うパートも、すべて丁寧にアプローチしていますね。インテリジェンスを感じます。ご本人のことは全く知らないのですが、おそらく略歴などを見る限りでも向上心や探求心が強く、冷静な判断力を持っているタイプの人なのかな、という印象ですね。
ジャケットも色合いが良いですし(寒そうだけど)、内容的にも気軽に楽しめる作品(別にポップという意味ではなくサウンド的に)が多いので、プレゼントにも良いかもしれません。
うーん、こういう素敵なアルバムが上がってくると、毎回「ユーフォニアムいいなあ、買っちゃおうかなあ」と思ってしまいますね。こんな風に演奏したいものです。
レビュー:梅本周平(Wind Band Press)
商品詳細は以下の通り。
■原題:Eire Time
■指揮者:マイケル・ファウルズ(Michael Fowles)
■演奏団体/演奏者:
ユーフォニアム:ゲイリー・カーティン(Gary Curtin)
フォーデンズ・バンド(Foden’s Band)
■レーベル:DOYEN
■発売年:2020年
■試聴:
■収録曲:
1. エイラ・タイム(アイルランドの時):アンドレア・プライス [7:32]
Eire Time:Andrea Price
2. ザ・ウォーター・イズ・ワイド(広い河の岸辺):編曲:スティーヴン・ロバーツ [5:03]
The Water is Wide:arr. Stephen Roberts
カンティフォニア:ベルト・アッペルモント(編曲:ポール・マクギー)
Cantiphonia – Concerto for Euphonium and Brass Band:Bert Appermont (arr. Paul McGhee)
3. i. Contrasti [7:51]
4. ii. Romanza [6:46]
5. iii. Fugato [5:49]
6. 神々しい光の永遠の源よ:ジョナサン・ベイツ [4:14]
Eternal Source of Light Divine:Jonathan Bates
7. あなたの笑顔から:ポール・ロヴァット=クーパー [3:52]
From Your Smile:Paul Lovatt-Cooper
8. 妖精の踊り:アントニオ・バッジーニ(編曲:サイモン・オリヴァー) [4:50]
Dance of the Goblins:Antonio Bazzini (arr. Simon Oliver)
9. ディープ・サージ:トム・ハロルド [9:19]
Deep Surge:Tom Harrold
10. ただキリストにあって:リチャード・フィリップス [3:19]
In Christ Alone:Richard Phillips
11. 羊飼いの娘の踊り:ヒューゴ・アルヴェーン(編曲:フローデ・ライドランド) [3:45]
Vallflickans Dans:Hugo Alfven (arr. Frode Rydland)
12. ゲット・ヒア・イフ・ユー・キャン:ブレンダ・ラッセル(編曲:ジョン・バーバー) [4:20]
Get Here If You Can:Brenda Russell (arr. John Barber)
13. ヴィーナスの謝肉祭:アレン・ヴィズッティ(編曲:ジョナサン・ベイツ) [6:26]
Carnival of Venus: Allen Vizzutti (arr. Jonathan Bates)
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